熊野古道 中辺路を初心者がスタンプ押しながらひとりで歩く!

Beginner-Kumano-title 古道早歩き

熊野古道は1000年以上も利用されつづけている、霊場熊野へとつづく参詣道。
うっそうとした森に苔むした石段。

テレビなどで見て、その幻想的でロマンティックな風景に心うばわれてしまったというあなた。
でも、どこをどう歩けばいいのか迷っていませんか?

そんなあなたには、熊野古道 中辺路がおすすめ

熊野古道どころかトレッキングもしたことがない……
ジョギングなどの有酸素運動も得意じゃない……

そんな、古道歩きが初めてで不安いっぱいで臨んだ OYG! でしたが、
中辺路をひとりで歩いて、熊野そのものの魅力にどっぷりとハマってしまったんです。

それ以来毎年のように熊野へ行き、小辺路、中辺路(2回)、大辺路、紀伊路を踏破。
中辺路にかんしては、小辺路や紀伊路を歩いたあとは必然的に歩くので都合4回は歩いています。
(伊勢路はまだなんですが、燃え尽き症候群がこわくて残してます……)

この記事では OYG! が実際に中辺路を4回歩いて感じた、

① 熊野古道の魅力
② アドバイス
③ 所要時間

などを、中辺路初挑戦時の体験記を通してお伝えしたいと思います。

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熊野古道とは

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熊野古道は、熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)と京都や紀伊山地の霊場(高野山、
吉野、伊勢神宮)をむすぶ参詣道で、以下の6つのルートからなり総延長は1000kmにも及びます。

紀伊路(きじ・きいじ)- 熊野御幸(くまのごこう)に使用された正式ルート(大阪 – 田辺)
小辺路 (こへち)- 高野山と熊野をむすぶルート(高野山 – 中辺路)
中辺路(なかへち)- 熊野三山をむすぶルート(田辺 – 熊野三山)
大辺路(おおへち)- 田辺から海沿いをまわるルート(田辺 – 那智)
伊勢路(いせじ)- 伊勢神宮と熊野をむすぶルート(伊勢神宮 – 中辺路)
大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)- 吉野と熊野をむすぶ修行のみち(吉野 – 中辺路)

2004年に「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として世界文化遺産に登録されましたが、
世界遺産に登録されているのは条件を満たした200km程度で、ここからここまでは世界遺産だけど、
ここからここまでは違うよってかんじで破線状に登録されています。

開発が進んだ道や参詣道だったことが確定できない場所は含まれていないんです。

海沿いで開発のしやすかった大辺路はほとんどが舗装されていて、120kmのうち10km程度しか登録されていませし、大阪から田辺へつづく紀伊路などは正式ルートであったにもかかわらず、まったく登録されていません。

逆に、世界遺産に登録されている部分の多くは、深山幽谷を通るため開発の手を免れ、1000年以上変わらぬ姿を今に伝えています。

『道』が世界遺産に登録されるのは珍しく、この「紀伊山地の霊場と参詣道」と「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」の2例のみです。

そして「熊野古道」と「サンティアゴへの道」は姉妹道提携がむすばれていて、それぞれの最終地点である和歌山県とスペイン・ガリシア州も友好・姉妹提携がむすばれています。

また、中辺路の「湯の峰温泉」にある「つぼ湯」は「紀伊山地の霊場と参詣道」に含まれており、 世界で唯一の世界遺産に登録された温泉となっていて、もちろん入浴もできます。

どこをどうやって歩くか

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では、たくさんあるルートのうち、どこから手(足)を付けたらいいのか?

国道からアクセスできて、簡単にその雰囲気を感じられる場所もあります。
でも、悠久の時がかもしだす幻想的な風景や歴史ロマンを味わうためには、やはり深山幽谷へ分け入り、
先人たちと同じ道を辿らねばなりません。

和歌山県観光連盟のサイトには、さまざまなモデルプランが紹介されています。
コースの距離や標準歩行時間、アドバイスなども知ることができます。

体力の許すかぎりは自分の足で歩いていただきたいです。

熊野古道がはじめての OYG! は、このサイトを参考にコースや日程を決めました。

何はともあれ中辺路!

はじめて熊野古道を歩くなら、まずは中辺路。

中辺路は熊野三山をむすぶルートで、他のルートはすべてがここへつながります。
まさに、熊野の聖域を歩くルートです。

なかでも、滝尻王子(たきじりおうじ)から山間部を通って熊野本宮大社へ至るルートが
もっともポピュラーなコースとなっています。

山歩き初心者の OYG! は、プラン通りこのコースを2日にわけて歩いてみることにしました。

でも、このコースよく見ると「上級コース」って書かれてますね、OYG! は後から気づきました。
なんとか歩ききったんですが、そりゃしんどいはずだ……

あなたの体力にあったプランをちゃんと選んでくださいね!

ガイドブックは買わなくていい!

和歌山県観光連盟のサイトには、ダウンロードも可能なコースマップもあります。

かなり詳細で見やすく、お手洗や自販機、バス停なども示されていて市販のガイドブックは不要です。
OYG! もこれを印刷して持っていきました。

ただし、マップケースかジップロックに入れて携帯することをお勧めします。
歩いている最中にけっこう頻繁にコースマップを見ます。

OYG! は折りたたんでポケットに入れていたんですが、汗や雨でシミだらけのボロボロになって、
後半は見ることができませんでした。

せっかく歩くならスタンプ押印帳は必須!

中辺路には、完歩したことを証明するためのスタンプ押印帳が用意されています。

中辺路のルート上36か所に完歩スタンプが設置されていて、これを押印しながら歩くのが楽しい。
それに、全部のスタンプを集めると和歌山県知事から「完全踏破証明書」が発行されるんです!

中辺路の押印帳は、観光協会などで100円で購入する必要があります。

中辺路町観光協会は滝尻王子の熊野古道館内にありますが午前8時30分からなので、早朝から歩きたい場合は事前に入手する必要があります。

ただ、郵送もしていただけるようなので観光協会などに問い合わせてみてください。

今は書かれていないようですが、以前はサイトにも郵送してもらえる旨が書いてあって確か、押印帳代と郵送料をあわせた分の切手を同封した封書を送って、押印帳を送ってもらうという手順だったと思います。

実際 OYG! も郵送していただきました。

でも実は、申し込むのが遅かったため出発までに押印帳が届かず、今回のチャレンジではスタンプを押すことができなかったんです……

郵送してもらう場合は、余裕をもって早めに準備してくださいね。

ほかのルートの押印帳は、前述のサイトから無料でダウンロードもできますし、現地のスタンプ設置場所などにも置いてあります。

そちらのほうがきれいな冊子になっているのでオススメですが、切れている場合もあるので念のため印刷したものも持って行ったほうがよいと思います。

現地までは何で行く?

やはり電車かバスで行くのが基本だと思います。

OYG! は確実に座れる高速バスがお気に入りです。
大阪から田辺だと料金はほぼ同じで乗り換えもなく、高速バスの方が早く着きます。

お住いの地域によって異なってくると思いますので、YAHOO! の乗り換え案内などで調べてみてください。

歩き終えたあとなどに色々と観光したいという場合は、交通の便があまりいいとは言えないので、
現地まで自家用車で行くのがよいと思います。

ただしその場合は歩いているあいだ車を止めておける場所と、そこまで戻る手段を確保する必要があり、コースによっては不可能な場合もあります。

今回 OYG! は以下のように、車 ⇒ 歩き ⇒ バスでもどる ⇒ 車 ⇒ 歩き ⇒ バスでもどる
って感じにやりました。

0日目:早朝から歩くため、夜に車で滝尻王子へ前乗り込みし車中泊。
1日目:滝尻王子から継桜王子まで歩き、バスで滝尻王子へもどり車中泊。
2日目:車で継桜王子まで行って、本宮大社まで歩き、バスでもどって車で本宮大社へ行き車中泊。
3日目:車で熊野速玉大社と熊野那智大社を観光して、家に帰る。

1日目 滝尻王子から継桜王子まで

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今回の出発点は滝尻王子なんですが、そもそもこの王子ってなに?

調べてみると、皇族や貴人による熊野詣の先達(せんだつ)を努めた熊野修験たちが組織した一群の神社で、
参詣者の守護が祈願されたとあります。

ちなみに王子とは熊野の神の御子神(みこがみ)を意味しているそうです。
熊野の神様の子供たちですね。

これらは九十九王子(くじゅうくおうじ)とよばれ、正式ルートである紀伊路と中辺路沿いにたくさん存在しています。

九十九というのは数が多いことの比喩表現で、実際には100以上の王子社があります。
滝尻王子から本宮大社までは滝尻王子を含めて18の王子社があります。

前置きが長くなりましたが、いよいよ出発です!

滝尻王子(たきじりおうじ)

滝尻王子

なるべく人に会いたくない OYG! は、あたりが明るくなる 朝6:00 に歩き出しました。

滝尻王子

滝尻王子の入り口付近には、

「世界遺産 紀伊山地の霊場と参詣道 熊野参詣道中辺路」

と書かれたおおきな石碑があり、いやがおうにも気持ちが高まります。

古道への入り口は、滝尻王子社の裏手にあります。
写真ではわかりにくいんですが、いきなり急な石段が登場し OYG! にプレッシャーをかけてきます。

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それに薄暗くて少し不気味です……

不寝王子(ねずおうじ)

かなりきつい上り坂を 500mほど上ると巨岩が出迎えてくれます。

女性がくぐると安産になるという「胎内くぐり」と、藤原秀衡ゆかりの「乳岩」です。

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でも OYG! は、なんか怖いので脇を迂回してやり過ごします。

そして、すこし進むと不寝王子の石碑があります。

滝尻王子からここまで0.5km、OYG! は14分です。

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展望台まではまだ半分たらず、まだまだ急な上り坂がつづきます……

高原熊野神社(たかはらくまのじんじゃ)

展望台からは比較的なだらかな道がつづきますが、高原直前に急坂がまっています。
これを登り切ると高原集落で民家があり、はぁ~、なんか安心します。

車道をすこし行くと高原熊野神社があります。中辺路沿いにある建築物としては最古のものだそうです。

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不寝王子からここまで3.2km、OYG! は55分です。

そして OYG! が初めての熊野古道で最初に感動したのが、この社殿を囲むようにそそり立つ大楠たち!

高原熊野神社

古いものは樹齢1000年を超えるともいわれています。

ひとときの安心と感動を味わったのち先へ進むと……

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うわ、怖っ!

熊野古道らしい石畳なんだけど、これひとりで進んでって大丈夫?

しばし休憩……いや、立ち尽くしていました。

大門王子(だいもんおうじ)

でも、進むしかないのでがんばって進んで大門王子に到着!

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高原熊野神社からここまで1.8km、OYG! は35分です。

写真だけ撮って、早々に立ち去ります……

十丈王子(じゅうじょうおうじ)

うっそうとした山道を初心者 OYG! はドキドキしながら進みます。

熊野古道 中辺路

途中、見晴らしのいい道をとおって十丈王子に到着!

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大門王子からここまで1.5km、OYG! は33分です。

ここから中辺路最高峰の悪四郎山(あくしろうやま)へ。

大坂本王子(おおさかもとおうじ)

悪四郎山さえ越えればあとは標高を下げていき、下りきったあたりが大坂本王子です。

大坂本王子

この写真は下ってきたところを振り返って撮ってます。

十丈王子からここまで3.9km、OYG! は64分です。

高原からここまで、うっそうとした森の道はいかにも熊野古道という感じで雰囲気のある素敵な道。

熊野に何回も通った今ならそう思うんですが、熊野古道どころかトレッキングが初めてのこのときは、
先がどうなっているかわからないし、滑落しそうだし、熊や猪も出そうだし、ここまでただひたすらに目的地を目指して歩いた感じです。

牛馬童子(ぎゅうばどうじ)

大坂本王子からは、なだらかな下りの道がつづきます。

やがて右手眼下に国道311号が見え、道の駅「熊野古道中辺路」もあり観光バスも止まってます。
そこから観光客が古道へ上ってきます。

ここから 800m ほど行ったところに牛馬童子があるんですが、車で横付けしてチョロっと歩いて、小さな石像を見て、何か感じることはあるんでしょうか。
(それが悪いということではないです。OYG! がそうしてたらどうだったろうということです)

滝尻からのたいして長くない距離ではありますが、ここまで自分の足でたどりついたことに、誇りのようなものを感じた OYG! でした。

牛馬童子

牛馬童子もひとしお愛おしく見えたような気がしました。

大坂本王子からここまで1.6km、OYG! は25分です。

近露王子(ちかつゆおうじ)

牛馬童子からすこし進むと急な下り坂となり、近露の里が広がっているのが見えてきます。

町だ!やっと森を抜けた!
かなり急な下り坂ですが、つい急ぎ足になってしまいます。

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森を歩きたくて来たんですけどね……

車道へでたらすぐ日置川(ひきがわ)をわたる橋があり、これを渡ってすぐ左手に近露王子の石碑があります。

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牛馬童子からここまで0.5km、OYG! は15分です。

しばし休憩をして、また歩き出します。
1日目の目的地である継桜王子までは、あと一息。

しばらく舗装された道を歩いて安心していたら突然、楠山坂登り口(くすやまざかのぼりぐち)が登場します。

うわ、また薄暗い山道!
いや、それを歩きに来たんだって……

比曽原王子(ひそはらおうじ)

薄暗い上り坂をしばらく我慢して歩くと、意外とすぐに舗装路へでます。
我慢って……

舗装路を歩いていくと道路沿いに比曽原王子があります。

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近露王子からここまで2.7km、OYG! は37分です。

ここから継桜王子までは、このまま舗装路を歩くことになります。
ひと安心……

継桜王子(つぎざくらおうじ)

ずっと舗装路を歩くんで安心なんですが、舗装された坂道って気のせいかもしれませんけど、
なんかしんどく感じませんか?

坂道を上っていくと前方に、茅葺屋根の「とがの木茶屋」が見えてきました。

ガイドブックで見たやつ!

そちらに気を取られて気付かなかったんですが、なんかすごいパワーを感じてふと横を見ると、大きな杉がそびえ立っています!

継桜王子

継桜王子です!

うお、カッケー!!

熊野古道のなかで OYG! が一番好きなパワースポットです。

比曽原王子からここまで1.2km、OYG! は18分です。

野中の一方杉(のなかのいっぽうすぎ)

継桜王子の参道を挟んで立ち並ぶ杉の巨木たち。

樹齢800年を超えるといわれる野中の一方杉です。

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その枝がみな、南東にある熊野那智大社に向かって伸びていることから一方杉と呼ばれています。

高原熊野神社の大楠もそうですが、明治末期の神社合祀の際に伐採の危機にあったのを、世界的な博物学者の南方熊楠による猛烈な神社合祀反対運動によって守られたそうです。

合祀時の伐採前には40本もの杉が林立していたそうですが、今も8本ほどの巨大な杉が見られます。

熊楠先生ありがとう!

野中の清水(のなかのしみず)

野中の清水

そして、継桜王子から舗装路を少し下ったところに野中の清水があります。
日本名水百選にも選ばれていて、もちろん飲むことができます。

そのまま舗装路を下っていくと国道311号にでて、そこに野中一方杉バス停があります。
ここからバスで滝尻王子まで戻るんですけど予定より早く着いたのもあって、
2時間待ちです……

バス停付近はお店はおろか日陰になるところも無くて、炎天下のなかひたすらバスを待ちました。
実はこの時が全行程で一番つらかったかもです……

いま考えたら2時間もあるんだし、とがの木茶屋か野中の清水あたりへ戻ればよかったなぁと思います。

2日目 継桜王子から熊野本宮大社まで

Beginner-Kumano23

2日目は、継桜王子から出発です。

なるべく人に会いたくない OYG! は今日も、あたりが明るくなる 朝6:00 に歩き出します。
下界は雲海のようになっています。

中川王子(なかのがわおうじ)

継桜王子から小広王子まではずっと舗装路で旧国道を歩きます。

舗装路をしばらく歩くと、青い案内板が道路沿いにあります。

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継桜王子からここまで1.0km、OYG! は10分です。

小広王子(こびろおうじ)

引き続き舗装路を進んでいくと、青い案内板がバス停の横にあります。

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中川王子からここまで2.1km、OYG! は25分です。

このすこし先の舗装路から、谷へ下る地道へ入っていきます。

熊野古道 中辺路

かなり急な下り坂を下っていくといったん県道にでて、きれいな水洗トイレがあり、さらに少し進んで谷へ下りきったところに東屋があります。

ここからいよいよ、中辺路でもっとも険しいといわれる山道を進んでいきます。

いったん東屋で休憩してから進めということでしょうか。

実際、ここから発心門王子までは急な上り下りをくりかえして、泣きそうなくらいしんどかったです。

熊瀬川王子(くませがわおうじ)

草鞋峠までの急な上り坂の中腹あたりに熊瀬川王子があります。

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小広王子からここまで0.7km、OYG! は20分です。

草鞋峠まで、まだまだ急坂がつづきます。
とにかくキツイです……

岩神王子(いわがみおうじ)

草鞋峠をこえて、こんどは急な坂を下ると仲人茶屋跡(なこうどぢゃやあと)があります。
そこからまた急な坂を上り切ったところに岩神王子があります。

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熊瀬川王子からここまで2.2km、OYG! は38分です。

先ほどの茶屋を挟んで草履峠の坂を女坂(めざか)、岩神峠の坂を男坂(おざか)といい、
両方合わせて女夫坂(めおとざか)と呼ばれています。

で、間にあるのが仲人茶屋。
なんとも素敵なんですが、この時はそんなことどうでもいいくらいしんどかったです。

岩神王子からまた急坂を下っていきます。

※2011年9月(このチャレンジの翌月)の台風12号の影響で、仲人茶屋から蛇形地蔵までは迂回路となっていて、現在(2019年12月)も岩神王子へはいけません

湯川王子(ゆかわおうじ)

岩神峠を下りきったあたりからは谷川沿いに比較的なだらかな道を歩き、おぎん地蔵や蛇形地蔵(じゃがたじぞう)を経由して湯川王子に到着です。

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岩神王子からここまで2.8km、OYG! は40分です。

ここからまた三越峠(みこしとうげ)へつづく険しい坂を上っていきます。
しかし、本宮大社まではこれが最後の難所となります。

話はそれますが、ここまで峠が連発しているので少しうんちくを。(常識かもしれませんが……)

峠は山を越えていく道の一番高い部分(坂を上り切った場所)のことですが、山の一番高い部分を越えていくイメージないですか? OYG! だけかな?

「とうげ」の語源は「たお」、「たわげ」など湾曲しているということから来ていると何かの本で読んだことがあります。(諸説あるようです)

今いる場所から目の前の山を越えていくという時、稜線を見てください。
たいがい、稜線の一番たわんでいる部分へ道はつづいていきます。

で、そこが峠です。

猪鼻王子(いのはなおうじ)

三越峠を越えたら、あとは平たんな林道をひたすら歩きます。

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しばらく歩くと船玉神社(ふなたまじんじゃ)があります。

そのまま300mほどいくと林道から右下へ下っていく急坂があって、それを100mほど下ったところに猪鼻王子があります。

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湯川王子からここまで4.3km、OYG! は88分です。

こんどは急坂を100mほど上って先ほどの林道へ合流し、また平たんな林道を歩いていきます。

発心門王子(ほっしんもんおうじ)

林道をしばらく行くと、発心門王子へつづく坂がでてきます。

たっくん坂というかわいい名前がついていますが、めちゃくちゃ急な坂でしかも長いです。

ええっ! まだ難所あるやん!

たっくん坂

先の見えない坂や曲がった道にくるたびに、きっとあの先に鳥居が見えるはず……うあ、まだかぁ……
お、こんどこそ……ああ、まだまだ続いてる……

いやぁ、安心しきっていただけに気分的なものもあるかもですが、今回の工程でこの坂が一番泣きそうでした。

長く険しく苦しい道を歩いてきた参詣者が初めて大斎原(おおゆのはら)を一望し、感動のあまり平伏して拝んだといわれるのが伏拝王子(ふしおがみおうじ)。

ですが OYG! は、このたっくん坂を上って発心門の鳥居が見えた時に思わず伏し拝んでしまいました。
OYG! はこの坂を伏拝坂と勝手に改名させていただきます。

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猪鼻王子からここまで0.8km、OYG! は18分です。

水吞王子(みずのみおうじ)

発心門王子から舗装路を歩いてすぐに、きれいなトイレと休憩施設があります。
自動販売機もあるので、ここで少し休憩です。

OYG! はアクエリアスを2本(1ℓ)飲みました。

のどの渇きが癒えたところで、あらためて休憩のためのコーヒーを買おうとおもったんですが、もう小銭がありません。

大丈夫かなと思いつつ、雨と汗でビチョビチョの千円札を挿入してみました。
あぁ! 案の定、途中で詰まって止まってしまった!!

あ~ヤバいっ! かろうじて2、3cm出ています。
破れないようにそぉ~っと、そぉ~っと1mmずつ引き抜いていきます。
ふぅ、ふぅ……とれた……

コーヒーはあきらめ、気を取り直して歩きはじめます。

ここから発心門集落のなかの舗装路を歩いていくと水吞王子があります。

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発心門王子からここまで1.7km、OYG! は25分です。

ここからまた山道に入ります。
熊野古道らしい美しい道で、おもわず写真を撮りたくなります。

熊野古道 中辺路

伏拝王子(ふしおがみおうじ)

美しい山道は程なくしてまた舗装路に変わり、伏拝の集落に到着です。

舗装路をしばらく歩くと伏拝茶屋という休憩所があり、その向かいにある石段を上ったところが伏拝王子です。

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水吞王子からここまで1.9km、OYG! は30分です。

話の通りここからは大斎原(おおゆのはら)が一望できます。ゴールは目前!

伏拝王子

しかし発心門でピークをむかえた OYG! は、ここでは伏拝むまでではなかったです。

ちなみにこのあたり、茶畑などもあってNHKの朝の連ドラ「ほんまもん」のロケ地でもあるんです。

祓殿王子(はらいどおうじ)

伏拝からまた、よく整備されたきれいな山道を歩きます。

ここもやはり熊野古道らしい美しい道で写真を撮りたくなります。

Beginner-Kumano-sangencyaya

途中、小辺路が中辺路に合流するところがあり、そこが三軒茶屋跡(さんげんちゃやあと)です。

で、これが小辺路ですが、より一層山深く延々と高野山までつづいていそうに見えるこの道。

今回の道程を思い返して、トレッキング初めての OYG! は思わず息を呑みました。

しかしこの3年後に小辺路を歩き、高野山側からここへ到達することになります。

小辺路

三軒茶屋からは少しきつめの上りがしばらく続きます。

ここも熊野古道らしい美しい道で、本宮大社までさいごの古道を噛みしめながら歩きました。

熊野古道 中辺路

やがて山道が舗装路にかわり、中辺路のコースマップが立っています。

うお、これを歩いてきたのかぁ~!
感慨深いものがあります。


その先の階段をおりると住宅街にでます。
そのまま進んで突き当たったところに熊野本宮大社があり、祓殿王子はその直前にあります。

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伏拝王子からここまで3.1km、OYG! は56分です。

熊野本宮大社(くまのほんぐうたいしゃ)

祓殿王子のすぐ目の前に本宮大社の鳥居があります。
ようやく熊野本宮大社に到着です!

この時点ではわかってなかったんですが、ここは熊野本宮大社の裏手にあたりひっそりとしています。

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なので、到着した感がいまいち薄かったです。

鳥居をくぐって参道が続くもんだと思い込んで進んでいくと、いきなり八咫烏ポストと拝殿があって、ちょっと面喰いました。

Beginner-Kumano-honguu-post

今度このポストから手紙をだしてみようかな。

自分に。

そして、すぐ後ろに本殿があります。
すごく厳かな佇まいで、なんとも言えない威厳を感じます。

まずは、ここまで無事にたどり着けたお礼とご挨拶をしました。

熊野本宮大社

そして、境内から参道の階段を下りて、かつて熊野本宮大社があった大斎原へ向かいます。

大斎原(おおゆのはら)

本宮大社正面の鳥居をでて道路をわたるとすぐに、日本一高い大鳥居(高さ33.9m、横42m)が出迎えてくれます。

大斎原 大鳥居

熊野本宮大社はもともと、熊野川・音無川・岩田川の合流点にある大斎原と呼ばれる中洲にあったんですが、明治22年の大水害で社殿の多くが流されてしまい、残った4社がいまの場所に移されたんだそうです。

神が舞い降りたという大斎原

いまはただ祠があるだけの森ですが、それがかえって神秘的な雰囲気とパワーを感じさせます。

祠の前で手を合わせ、なぜだか OYG! は少しジーンとしました

大斎原

今回のコースはこれで終わりですが、OYG! の旅はまだコンプリートしていません。
そう、継桜王子まで車をとりに行かなければなりません……

なにはともあれ無事に到着出来てよかったです。
熊野の神々に感謝です、ありがとうございました!

まとめ

Beginner-Kumano-honguu-sando

中辺路は熊野三山をむすぶルートで、他のルートはすべてがここへつながります。
まさに熊野の聖域を歩くルートで、熊野古道の魅力がギュッとつまっています!

OYG! が実際に歩いて感じた熊野古道の魅力と、実体験にもとづくアドバイスを以下にまとめます。

ちょっと長いですけど……

OYG! が感じた熊野古道の魅力

薄暗くうっそうとした森の道

熊野古道には明るく清々しい道もたくさんありますが、薄暗くうっそうとした森の道こそが
熊野古道の最大の魅力
だと OYG! は考えます。

たった一人で歩いていると不安に苛まれて思わず足早になってしまうんですが、
長く険しく薄暗くうっそうとした森の苦しい道を歩きぬいて、集落や聖地にたどり着いたときの
解放感や達成感は、通常の登山やマラソンなどでは味わえない独特なものだと思います。

死者の国と呼ぶのにふさわしい独特の雰囲気をもっている反面、森と森の生き物たちの生命力につつまれて
自分も自然の一部になったような不思議な感覚を持ちました。

黄泉の国をただひたすらに歩いて、色々なことを考え、パワーをもらい、また日常を元気に過ごしていくことができそうです。
まさに「よみがえり」の道です。

雨の熊野古道

紀伊山地は日本で最も雨の多い地域です。
せっかく休みをとって熊野に来たのに雨……

たしかに雨の山道は歩きにくいし、きれいな景色も眺望できません。
だからと言って落胆する必要はありません。

この温暖な多雨地帯に広がるうっそうとした森は、雨の日にこそ本領を発揮します。

雨にぬれた常緑の葉や苔は緑を増して生き生きとし、石畳はぬらぬらと輝いています。
霧に包まれた古道は、よりいっそう幻想的な姿をみせてくれるんです!

・おすすめの季節

鬱蒼とした森や苔むす風景を満喫するには、やっぱり新緑から夏にかけてがおすすめ!

OYG! の実体験にもとづくアドバイス

登山靴よりトレッキングシューズ

ほぼ登山という道もありますが、舗装路も多いのでトレッキングシューズがおすすめです。
また、濡れた石畳や土留の木はめちゃくちゃ滑るので底が滑りにくいものを選んで下さいね。

ただし、雨が降っていなくても滑りやすいので、なるべく垂直にやさしく足を置くように歩きましょう。

ちなみに OYG! はロングディスタンス向けのトレランシューズを履いてます。

コースマップ、押印帳、紙幣はジップロック

やはり雨が多いのと険しい道で汗だくになるので、ぐにょぐにょになります。
プリントアウトしたコースマップなどは雨が降るともはや紙くずです。

押印帳は事前に準備

中辺路のものは観光協会などでしか入手できないので、早朝から歩く場合は事前に入手しておく必要があります。

郵送できないか観光協会に問い合わせみてください(OYG! は郵送して頂きました)。

早朝いちばん乗りはクモの巣こうげきにあう

時期や場所にもよりますが OYG! が歩いたこのときは、道をはさんだ木と木のあいだのちょうど OYG! の顔の位置にクモの巣がかかっていて「ぶわっふ?!」ってなりました。

これが数十メートルおきに延々とつづいていました。

いちばん乗りをやめるか、ツバのある帽子をかぶりましょう。
OYG! はストックを正眼に構えたまま歩きました。

いろんな生き物がとびだしてくる

これも時期や場所によりますが、OYG! の経験では、ヒグラシ、アブ、ヒキガエル、マムシ、シカ、イノシシ、サル……さいわいクマにはまだ遭遇していません。

意外と手ごわいのが最初の3つ。

ヒグラシは昼間は木の根元あたりの草むらに潜んでいて、近づくといきなりカサカサ……
サバサバサバサ!!!って目の前を飛んでいきます。
ちょービックリします。

アブは血を吸おうと延々とついてきます。
ちょーうっとうしいです。

雨の日はヒキガエルが道のまんなかに座っています。
保護色なのと坂道なので、ふと顔をあげると目の前にいて目があいます。
「うわあ!」って OYG! の悲鳴が何度も森にこだまします。

クモの巣同様、この3つも数回とかでなく延々とつづくんです。

夏は虫除けスプレー必須

たとえば野中の一方杉などは OYG! も、しばらく眺めたり触ったりするんですが、立ち止まった瞬間、
やぶ蚊の大群に襲われます。
また、汗であっという間に落ちるので何度も塗りなおす必要があります。

天候・体調・装備などを十分に考えて無理をせず歩きましょう

1000年以上開発を免れてきた古道ですから、基本的に深山幽谷の険しい道でエスケープのできない場合も多いので、観光地だからとナメてはいけません

滑落に注意

片側が崖の極端に細い道や崩落している場所もありますので、十分に注意して進んでください。
また、報告されていない土砂崩れに出くわす場合もありますので、無理をせず引き返す勇気も必要です。

バスの時刻をチェック

本数が少ないですし終バスも早いので、歩く所要時間とバスの時刻をよく考えておきましょう。
OYG! のように炎天下のなか2時間まちなんてことも考慮しておく必要があります。

今回利用させていただいた駐車場

滝尻王子:熊野古道館駐車場
継桜王子:秀衡桜前駐車場(野中の清水を東へ数十メートル行った民家と民家の間にある。5~6台)
どちらも無料です。

現在(2019年12月)は岩神王子へはいけません

OYG! は2011年8月にここを歩いたんですが、その翌月2011年9月の台風12号の影響で、仲人茶屋から蛇形地蔵までは現在も通行止めとなっていて迂回路を歩くことになります。

41歳初心者おやじの所要時間

・OYG! はコースマップの所要時間よりほんの少しだけ早かった

和歌山県観光連盟のサイトにあるコースマップには参考となる所要時間が記載されています。
【距離:約38km 標準歩行時間:各日約6時間30分~7時間】

OYG! の所要時間はこのとおり。
1日目 約5.5時間
2日目 約6.5時間

コースマップの所要時間は休憩時間を含まない純粋な歩行時間です。
OYG! の場合は見学や撮影などをしながらの所要時間なので、標準よりは少し早いと言えます。

OYG! はスタミナこそないですが足腰は丈夫な方なので、体力に自信のない場合は標準歩行時間か、
その1.5倍くらいを想定しておいたほうがいいと思います。

そして熊野御幸へ

熊野詣の正式ルートは、熊野御幸(くまのごこう)で使用された紀伊路と中辺路です。

なので中辺路はマラソンでいうと、最後の競技場のトラック1週って感じじゃない?

ここだけ歩いてゴールしたぜ!みたいにしていいの?
やっぱり全行程を歩いてこそ伏拝王子で伏し拝むんじゃないの?

そんなことを考えてしまった OYG! は、1年後に熊野御幸ルートにチャレンジすることを決意し、
大嫌いだった有酸素運動であるジョギングを始めるのであります。

熊野御幸チャレンジ記事は鋭意執筆中です。

古道早歩き
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ソロツーやソロキャンの様子を主につぶやいとります
オヤジノコドー